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INTERVIEW
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INTERVIEW

リュウジ「バズったレシピに願いを。全人類が料理を愛し、自炊をする人が増えますように」

取材・文=松浦達也

写真=萬田康文

2018年にスタートした「料理研究家リュウジのバズレシピ」。

これまでに投稿した動画は700本近く、動画の累計再生回数は、約4億回に及ぶ。チャンネル登録者数は243万人!料理系YouTube随一の人気チャンネルを誇る。

時に酩酊とも言えるほどに酔いながらもカメラの前で料理を作り続ける、破天荒な料理研究家の姿に、人々は喝采を送る。

リュウジ曰く「バズらせることしか考えていない」。果たして、その真意とは?

2021年12月10日発売「my HERO vol.02」より引用

【YouTuberの戦略】my HERO vol.02 ~ BEHIND THE SCENE ~

SNS上で驚異的なフォロワー数を誇り、幅広い世代から支持を受ける料理研究家は、今、何を思っているのだろうか。
YouTubeの収録を行っている彼のスタジオに足を踏み入れると、雑然としている中に、バズレシピ独特の調和があった。特別なこだわりがないと話す調味料に、手に入りやすいものしか使わないという調理器具が当たり前のように並ぶ。
普段の動画でのハイテンションな姿とは裏腹に「素の自分は暗いんです」と語り、ローギアで淡々と語る姿に驚かされるが、飲めば陽気になって話が止まらなくなる性格なのだという。素の状態で、あけすけに語ってくれた。
リュウジの料理器具が並んである
my HERO vol.02(リュウジ)

僕のモチベーションって、とにかく料理の楽しさ、良さを伝えることにあるんです。

──「料理研究家リュウジのバズレシピ」はほぼ毎日動画がアップされています。いつもはどんなペースで収録しているのでしょう。

リュウジ 週に6本上げているので、月25本ペースですね。週に2回、4時間かけて4本の動画を撮っています。撮影自体は1本に1時間くらい。1動画1レシピをずっと回しっぱなしで、後はチームのスタッフに切り貼りしてもらう。俺はただレシピを紹介して料理を作ってるだけです。料理さえ映っていればいいから、後は勝手に編集してね、って。事前に企画会議もなし。打ち合わせらしい打ち合わせもしない。レシピを作れば、それがイコール動画の企画になります。メニューを決めて、食材を買ってきてもらったら、回し始めますね。レシピの組み立て、ポイントは素面の時に整理しますけど、動画で何をどう話すかは特に考えないで、とにかく回してもらっちゃいますね。

──現在、動画の制作、編集体制はどうなっていますか?

リュウジ 会社組織にしています。スタッフは全員契約社員。編集&撮影班が3人、料理系のアシスタントが1人。みんな友達で、もっと言うと友達しか会社に入れません。撮影のある日は、昼の12時に集合して夕方まで撮影。その後、スマブラやりながら深夜の2時くらいまで飲んで、誰かがつぶれたら終了、解散です。

──そういえば、動画の中でも、よくお酒を飲まれていますよね。

リュウジ 普段はそんなに飲まないんですよ。いや、ほんとに。一人では晩酌もしませんからね。お酒を飲むのは友達と一緒の時だけですね。飲むのは週に3回くらいかな。休肝日を週に3日は設けるように心掛けています。でも俺、お酒を飲まないとテンションが上がらないんですよ。今日は飲んでないので暗いです(笑)。そもそもYouTubeで飲み始めたのは、動画を観た友達から「暗過ぎる」って言われたのがきっかけなんです。「これじゃ再生数も伸びないんじゃないの?」って言われて、じゃあ飲むかって。トップYouTuberのみなさんって、明るくしてるじゃないですか。俺、どうやったら明るくなるかなって考えたら、飲酒に行き着きました。普段は暗いけど、お酒を飲めば人格が明るくなるんです。

──酔っぱらっていても、料理の仕組みとか味の組み立てについての話が理路整然と出てきますよね。

リュウジ むしろ酔っぱらってる方が話せますね。料理オタクなんで、酔うほどに熱く語りたくなる。「ここがいいんですよ!」という情熱的な言葉は酔わないと言えないし、言わない。

──ほとんど酩酊(めいてい)に見えるようなぐでんぐでんの回もありますよね。

リュウジ 収録日の後半に撮った回は自然とそうなりますね。4本撮りの3本目、4本目は単なる酔っ払いです。記憶も飛んでますね(笑)。お酒は好きだけど、そんなに強くない。ただ、酔ってからが長い。それが、ちょうどいいんですかね。

──今の話からすると、1週間に最低でも8本はレシピを考えなければいけないわけで、そのことに苦労や悩みはありませんか?

リュウジ レシピを作る前には必ず、施策をするんですけど、その時はお酒を飲みません。ぶつぶつ言いながら暗く料理しています。試作を毎日しても、レシピのネタは尽きないですね。先月は100レシピを作りました。本当は今、3年くらいは何も考えなくても大丈夫なくらいのストックはあります。普通に毎日レシピが増えていくので、死ぬまでに全部公開できるかどうか。悩みはそこかな。わりと真剣に心配しています。

──贅沢な悩みですね。レシピはどのように組み立てていくのでしょう? 

リュウジ 素材と調味料の組み合わせで、まだ試していない相手をローラー作戦でつぶしていく。パスタをうどんに置き換えてうどんナポリタン、カルボナーラうどんとかね。どんどん創作していけばネタは尽きないですよ。ふと浮かんだりするんです。あっ、ボンゴレうどんってまだ作ってないなとか、牛丼のアタマで肉うどんも作ってないな、とかね。

リュウジ買い貯めたお酒コレクション
my HERO vol.02(リュウジ)

──バズらせるために、突飛な組み合わせを考えることもありますか?

リュウジ 突飛な組み合わせってバズらないんですよ。人は想像できるもの、安心できる料理が好きなんです。料理では失敗したくない。となると未知なる料理を警戒するんです。だから、俺の動画でも牛丼、親子丼、パスタ、カルボナーラといった、みんな大好きな王道メニューがウケるんです。

──動画を観ていると、はっきりした味のメニューが多いように思いますが、その辺は意識しての味付けですか?

リュウジ 一口食べて、おいしいと思ってもらえる味付けを目指しています。飲食店──特にファミレスに近いくらいの味付けにしようとは意識してますね。食べ進めないと分からないおいしさとか、薄味でしみじみした料理って「また作ろう」とはならないんです。例えば、焼き鳥って、最初に口にする先端の肉に塩をしっかり当てるじゃないですか。そこがポイントです。最後まで食べ進めておいしいのも大切ですけど、YouTubeのレシピって、一口目がダメなら二口目もない。一口目のインパクトが強ければ「また作ろう」となってくれるんです。

──数えきれないくらいのレシピがある中で、撮影で取り上げるメニューはどう決めるのですか?

リュウジ 現実的に多いパターンは、まず食材があってそれをどうにかする、食材先行型ですね。特に肉は収録の日には多めに用意するので、たいてい食材が余ってしまう。フードロスにならないよう、あるものを使っていくと似た素材が続いてしまう。材料がかぶるのが、今の最大の悩みです。

──解決策は?

リュウジ 味付けや調理の手法を変えて調整することが多いですね。あるいは、あまりに似ちゃうようなら、何週間か後に回して、他のものを先にアップしたりすることもあります。

料理の楽しさを全身で伝えるリュウジ
my HERO vol.02(リュウジ)

料理の楽しさを知るきっかけとして「バズレシピ」を通過してほしい。俺は入り口でいいんですよ。

──動画を取り続けるモチベーションはどうキープしていますか。

リュウジ 僕のモチベーションって、とにかく料理の楽しさ、良さを伝えることにあるんです。得意や苦手はあるにしても、料理を作る人が増えると世界が幸せになるんですよ。例えばTwitterに、料理を毎日作らなくちゃいけない主婦の方から「夫や子どもが食べてくれない」「味が薄いと文句を言われた」というような悩み相談がしょっちゅう飛んできます。でも大半は、料理を楽しむ人が増えれば解決できると思うんです。イヤイヤ作っている人が楽しんで作るようになるだけで、料理はおいしくなる。普段は料理をしないで、食べるだけしかしない人が料理をするようになれば、作り手の気持ちも理解して優しくなる。だから、自炊人口を増やすためなら、俺は何でもやります。

──なぜそこまで自炊人口を増やすことに懸命になるんでしょうか。

リュウジ 料理の話ができる友達が欲しいと、ずっと思っていました。俺は昔から料理が好きだったんです。でも、料理の話を友達としたことがなくて。野球だとかテレビ番組の話をするように、料理の話をしたいんだけど、周りには料理をする人が一人もいなかった。「コンビニ行けばいいじゃん」とか「牛丼屋でいいじゃん」という人ばかり。だから料理人口が増えて、自炊する人が増えたら、料理の話で盛り上がれると思ったのが、そもそもの始まりなんです。10年前からずっと、俺がこうやって料理をするのは、友達を増やす活動の一環なんです。地道にやってきたつもりですが、なかなか料理をするという友達は増えませんね(笑)。

──料理における識字率を上げて、共通言語を持つ人を増やしたいということですね。

リュウジ そうです、そうです。そのためなら、味の素もガンガン使います。うま味調味料って、純粋なうま味の素であるグルタミン酸ナトリウムだけを足してくれるから、余計な味を加えることなく簡単においしくなる。料理が簡単だと思えたら料理に対するハードルは下げられますよね。みんな面倒だと思ってるから、料理をしないんですよ。

調味料の味の素が2本
my HERO vol.02(リュウジ)

──味の素は、料理経験の少ない人が、成功体験を積むのにもってこいの調味料だと。

リュウジ そう思いますよ。鰹節や昆布、鶏ガラで同じ味を出そうとしたら、どれだけ大変か。でも使うとめちゃくちゃ叩かれるんです。

──「プロなのにけしからん」ということですか?

リュウジ そうなんです。炎上するんです。僕自身、20代の頃はアンチ味の素でした。それが、千葉の地元で評判のレストランで働いてみてわかったんです。その店は、ほんの少しだけ味の素を使っていたんですよね。そこでは、おいしいものをいっぱい食べているという気取った客たちが、うま味調味料入りのドレッシングをこぞって絶賛するんです。そんな光景を見ていると「この調味料で幸せになっている人が、こんなにいるなら、それも正解なんじゃないか」と思うようになったんです。動画では、こんな説明もしませんから、ちょいちょい炎上しますけどね。

──炎上するのは嫌じゃないですか。

リュウジ そのことによって、観てくれる人が増えるなら構いません。どう見られてもいいし、動画にもジャンクなイメージがつきまとっているかもしれませんが、それもすべて狙ってやっていますから。自分だけのためなら、うま味調味料を使わない料理が好きですよ。でも、自分の趣味の料理観を押しつけても、料理人口は増えませんよね。それより、うま味調味料を上手に使って、おいしいと思えるものを作ってもらったほうがいい。そもそもうま味調味料を叩く多くの人は、料理しない人です。誰かに料理を作ってもらっている人って、勝手なことを言ったりするんです。自炊初心者や料理のエントリーユーザーに必要なのは「おいしい」成功体験です。ストイックである必要はないんです。

──では今後、料理研究家としてどういう展開を考えていますか?

リュウジ あんまり考えてないんです(笑)。契約社員として働いてくれている友達にも「飽きたら辞めちゃうから。そうなったらごめんね」って先に謝っています。でもYouTubeは今の状態が続くのはせいぜい2、3年じゃないですか。そもそもマーケットとして不安定だし、他力本願でしかない。再生回数のインセンティブのレートが突然引き下げられるかもしれないし、僕が泥酔してハニートラップに引っかかって、スクープされてネットで袋叩きに遭ったら、企業広告やPRの話なんて簡単に吹き飛びますよ(笑)。幸い今は配信メディアは無限にあります。今のうちに稼いで、YouTubeがなくなったとしても、自炊人口を増やせる別のメディアを立ち上げられたらいいですね。

インタビュー全編は本誌をご覧ください。
顎に手をあて真剣な眼差しのリュウジ
my HERO vol.02(リュウジ)
【PROFILE】
リュウジ

1986年、千葉県生まれ。高校生の頃、母親のために焼いた一枚の鶏むね肉のソテーから料理の楽しさに目覚める。イタリア料理店や老人介護施設での調理経験を経て、料理研究家に。2017年3月28日にTwitterに投稿した「大根の唐揚げ」が話題になった後、Twitterで「ペッパーチーズ枝豆」「無限キャベツ」などのレシピを次々にバズらせる。2018年にYouTubeチャンネルを開設後、快進撃に加速がつき、現在までにInstagramフォロワー123万人、公式LINE登録31万人、Twitterフォロワー数194万人、YouTubeチャンネル登録者数243万人(総再生回数4億回)などSNSの総フォロワー数は延べ600万人を超える。「作りたくなるレシピ」を各メディアから強力に発信する。その他、テレビ・ラジオ含め、幅広く活躍中(数字はすべて2021年11月時点)。

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