写真:興梠真穂
ライター:綾 里枝
スタイリスト:岩田友裕
メイキング映像:Kohei Kamada
メイキング映像(my HERO 公式YouTubeチャンネル)
会えなくなるのが寂しくて、それで「一緒にミクチャを始めない?」と、えなぴーを誘いました。
むく 同じクラスになったのがきっかけで知り合いました。生活班が同じになって、その中でえなぴーは班長だったんです。だから最初の印象は班長(笑)。
えなぴ やってたね(笑)。うちは出会った時、多分違う性格なんだろうなって思った覚えがある。班は一緒でも休み時間はそれぞれ違うグループで遊んでたし。私は授業中騒ぐキャラで、むくは真面目だからこういうの嫌だろうな、みたいな。
むく その時からお互い正反対の存在って認識してたよね。
むく だんだんとグループが同じになっていったんですよね。でも、かといってめちゃくちゃ二人で仲いいとかじゃなくって。グッと仲良くなったのは中学3年生でクラスが一緒になった時かもしれない。卒業して別々の高校に行くことになって、これまでみたいに会えなくなるのが寂しくて、それで「一緒にミクチャ(※1)を始めない?」と、えなぴーを誘いました。
えなぴ 二人ともダンス経験があるので、振りを作ったり双子ダンス(※2)を真似したりとかは遊びの中で普通にやってたんです。だからむくからの誘いは突拍子な感じがしなかった。あ、面白そう、オッケーって二つ返事で(笑)。
むく なんかえなぴーとならできそう、いい振り作れそうって思ったんだよね。
えなぴ はじめは本当に誘われるまま、楽しく踊ってただけでした。当時は編集から投稿までむくがやってくれてて。
むく せっかくアップするならちゃんと観てもらえる動画をって考えて作ってたけど、続けるうちに反響が大きくなってきて、まさかっていう感じで……。
えなぴ 当時、ライブ配信のお仕事で企画をしたりトークをしたりっていうことを経験してすごく楽しかったんですよね。何より二人ともいち視聴者としてYouTubeが好きだったから、楽しそう、やってみたい、って。もし失敗したら……とかまったく考えなかった。若かったからかな(笑)。
むく 高校二年生だったからね。もちろん職業にするぞ、みたいな意気込みではなくて、それまでの活動の延長でした。
えなぴ 今の若い世代がTikTok上げるのと同じ感覚というかね。でも実際、難しかった……。先輩YouTuberさんの企画を参考にしようにも、到底真似できないものばかりで。
むく 当時は大型企画系か美容系か、今みたいにジャンルが多くなかった気がする。
えなぴ うちらってYouTubeで何できるの? って結構葛藤したよね。血迷って知恵の輪とかやったの覚えてる(笑)?
むく やばい(笑)。
えなぴ YouTuberは日常に面白さを見出すって言うじゃないですか。それで 1回100均 に行ってみようって、なんとか見つけたのが知恵の輪だったんですよ。それで「JKが知恵の輪に挑戦!(※3)」みたいな(笑)。
むく あの頃の動画を観返すと、それはむずいよって言いたくなる(笑)。
えなぴ 本当に知恵の輪やるだけの動画だからね。撮影と編集に難しさとか苦手意識はなかったけど、企画は本当に悩んでました。
むく 高校卒業した2019年頃はあるある動画(※4)めっちゃやってたよね。
えなぴ うん。新しい視聴者さんに知られるための窓口みたいな企画だった。まずは観てもらって、そこから自分たちっぽい動画でファンになってもらうって流れを作りたくて。
むく 私たちらしさを出すために本当に色々やった気がする。それこそはじめは「JKの人」だったから。
えなぴ そう、最初はそれでよかったんだけど、卒業したらJKキャラが使えなくなって。今度あるあるを頑張ったら「あるあるの人」になった。でも、あるあるだってネタ自体を楽しんでるだけで、私たち自身を好きになってもらってるわけじゃないんですよね。それであるあるも辞めた。
二人でやって楽しいと思えて、感覚的にバチっときましたね。
えなぴ 髪型を固定させました。そのあたりから私は黒髪ロングにパッツン前髪、むくは茶髪に前髪斜め分けで。なにかの人、じゃなくてうちら自身にキャラをつけないと、たくさんいる女の子二人組の中に埋もれちゃうよねって話になったんです。
むく 元々好みのファッションとかメイクが正反対だったので、それを強調するようにしたというか。私ならガーリー系の服をより着るようにして、動画内ではカジュアルなファッションを控えてました。
えなぴ 人気YouTuberさんってちゃんとキャラが立ってるって思ったんですよ。結成当初から憧れていたスカイピースの二人も、顔の系統とか特徴が全然違う。私たちはそもそも顔が似てると言われることが多いので、せめて雰囲気を変えていかないとって。そうしたら、だんだんと「むくえな」を観てくれる人が増えた印象ですね。
えなぴ コロナ禍で今のスタイルに固まっていったよね。
むく 外出自粛期間はリモートで撮った動画を投稿してたんですね。あの時は撮りづらいし面白くないし、伸びないしで地獄だった……(笑)。
えなぴ 本当に地獄(笑)。リモートだとタイムラグがあるから、うちが言ったことに対してむくが10秒後くらいに笑ってきたりして。編集もね、画面がすごい重くなっちゃってめっちゃ大変だったよね。
むく ね。でもリモートを解除してまた会って撮影再開した日、二人で撮るのがめちゃくちゃ楽しかった。言葉で表すのが難しいけど、「うん、やっぱこういうことか」みたいな感覚があって、そこからリモートする前よりよくなっていって。
えなぴ その頃、板チョコアイスをいっぱい食べる動画が流行ってて、それを撮ったんですよ。そしたら久々に会えたうちらの調子がまず良いし、サムネもめっちゃ綺麗に撮れて、すごい伸びたんです。私たちを知らない人でも食べものが気になって再生して、観てみたら女子二人で話してて楽しそう、面白い。これだ! って思ったよね、そこで。
むく そこから食べながらトークっていうのが私たちの中で確立してきた感じですね。
えなぴ 久しぶりに会って撮った時、本当感動だったな。なんか言ったらすぐ笑いが起こるんだもん(笑)。
むく ラグがないよね(笑)。
えなぴ ここで笑ってる! みたいな(笑)。改めて二人でやって楽しいと思えて、感覚的にバチっときましたね。
えなぴ 去年1年を通して知ってもらえたイメージですけど、その一番のきっかけはスカイピースさんとの最初のコラボ(※5)。そこから観てくれるようになった視聴者さんも、YouTuberさんもけっこう多くって。そこからヘラヘラ(三銃士)さんやコムドットさんとのコラボにもつながりました。
むく 撮影前日、じんたんからえなぴーに急に連絡がきて、え! てなったよね。
えなぴ そう、その少し前から動画でちょくちょく名前を出してくれてて、知ってもらってるだけで嬉しかったのにね。スカイピースさんは私たちがYouTube始めてからずっと目指してきた、「何してても二人がしゃべってるだけで面白い」っていうかたちをすでに作ってた二人なんですよ。
むく うん、ああいう感じになりたいと思ってた。
えなぴ まさかコラボできるなんて想像もしてなかったから感動だったね。
むく お願いできる立場じゃないみたいに思ってたかも(笑)。
えなぴ 自分たちからお願いしますっていけない性格もあって、遠慮がちになっちゃうというか。そういう理由もありつつ、やっぱり二人の空気感が一番いいんじゃない?ってところに甘えてる自分たちもいて。多分シンプルに技量が足りなかったんですね。
むく 今は楽しいよね。最初は緊張してたけど、普通に友達を作りに行く感覚で楽しめるようになりました。
えなぴ コラボするようになってからYouTuberさんとのコミュニティが広がったよね。
むく ね。仲良くなれるし、観てくれる人も増えるし、だからみんなするんだって思った(笑)。
むく うーん、少ない方ではあると思うんですけど、私たちをあまり知らない視聴者さんからの否定的なコメントが増えた時は最初戸惑いました。
えなぴ 本当にファンの子たちしか観てないチャンネルだったので、それまでが平和すぎた(笑)。
むく カメラの向こう側を意識することなく自由に話してたのが、一時期「今の発言、大丈夫?」って気にするようになったよね。
えなぴ 主に私なんですけど、1回スランプっぽくなった時がありました。これ言ったらこう否定されるだろうな、あれ言ったらああ否定されるだろうなって全員を意識し出したら、当たり障りないことしか言えなくなって。
えなぴ でも、それ気にしてたら面白くなくなっちゃうじゃないですか。気にしすぎてると感じたら、お笑い芸人さんを思い浮かべるようにしました。芸人さんってちょっと尖ってるから面白い。なにか突出しているところがないとつまらなくなっちゃうんですよね。
むく 観てくれる人全員に受け入れてもらうのは難しいよね。でも、誰にも否定されない普通の意見よりも、多少偏っていても私たちらしい言葉の方が強く共感してくれる人がいるから。
えなぴ そっちの方が人間味があるよね。
結成7周年記念の大きなイベントを迎えるのでそれも楽しみ。半年くらい前から新曲の準備を進めています。
えなぴ これまでリリースさせてもらった3曲はどっちかが主に書いて、できたものを一緒に調整するかたちで作っていきました。
むく 失恋の曲を作ろうとなったら、じゃあ最近失恋した私がちょっとやってみるねって。
えなぴ 片想いがテーマなら、片想いした私がいってみます、とか。
むく 実際に経験した恋愛がベースになってるんですよ。
えなぴ めっちゃリアルです(笑)。最初は歌詞づくりというよりは、物語をたどるみたいに書いてみるんです。相手はこういう男の子で、どういうところが好きだったかとか、この時どう思ったかとか。それを作曲してくださる方に整えてもらって、さらに修正してっていう感じで作っています。
えなぴ たしかにファンのみんな、同世代から下くらいの女の子がほとんどなので。私たちが普段感じてることに共感してもらえることが多いんじゃないかなって思います。
むく 直接会える機会が多い方だから距離も近いよね。イベントによっては一対一になれる時間があったりして、もう女子会みたいな感覚で話してます(笑)。
えなぴ めっちゃ楽しいよね。
むく 中には、ミクチャから応援してくれているファンの方もいるんですよ。
えなぴ すごいことだよね、普通に考えて。だって7年だよ?
むく ファンの子同士でみんな仲がいいしね。
えなぴ イベント会場で集まって写真を撮ったり、イベント後に遊んだりしてるみたいで、DMで教えてくれるんですよ。
むく これから結成7周年記念の大きなイベントを迎えるのでそれも楽しみ。半年くらい前から新曲の準備を進めています。
えなぴ もう裏ではずいぶん形ができてきてるんですよ。それに実は、4曲目となる新曲のリリースも控えてるんです。むくえなのイベントや楽曲が、ファンのみんなの夏の思い出の一つになったら嬉しい。
えなぴ みんなに面白いと思ってもらえるって、ずっと信じてたんですよ。信じてたというか、疑ってなかったというか。
むく うん。絶対みんな知らないだけだよって思ってた(笑)。
えなぴ 自分たちが一番自分たちのファンだし、自分たちが一番自分たちを応援してるって感じだったんですよね。なかなか伸びなくて悩んだ時期もあったけど、いつだろうね? いつかは来るんだろうけど、いつだろうね? って二人して(笑)。
むく くることはわかってた(笑)。そのくらい強気というか、本気で信じてました。でもめっちゃ大事なことだよね。自分たちのことをいいと思えないと、絶対に上は目指せないから。
えなぴ すごいアバウトなんですけど、何でもやってみたいですね。むくえなって何でもできるな、何やってもハマるなっていつも勝手に思ってるので(笑)。グッズ作ってもいいねって思うし、歌もいいし、ダンスもいいし。むくえなの世界観がもっと世間に広まってほしいなと思ってます。
むく 私も具体的にこれをしたいっていうよりは、いろんなことをしてみたい。どこにでもいるような私たち二人だからこそ、世間の人に知ってもらうことがなんだか不思議でおかしいことだなと思っていて。だからこそ「あのむくえなが?」って言われるようなことに挑戦してみたいです。
むく 二人が楽しいことをしてるのを発信するっていうベースはずっと変わらないでいたいな。
えなぴ これ絶対伸びるからって言って急にぜったいうちらがやらなそうなことはやらないだろうね。今、パッと思い浮かばないんだけど。
むく 体張ったりとかね(笑)。
えなぴ そう、おすもうさんと対決とか! あれ、今言ってみたらちょっと楽しそうですけど(笑)。あとは激辛を食べ切るとか、そういうつらそうなところを届けたいわけじゃないから。私たちらしく、おいしいものをおいしいところまで、ちょうどよく食べようみたいな感じをこれからも変えずに続けていきたいです。
むく 全部って感じです。友達でもあり親友でもあり、仕事のパートナーでもあり、姉妹のようでもあり、もう全部なんです。いろんな要素を含んだ人って感じですね。カテゴライズできないというか、これだっていうのがなくて、うまく表すのが難しい。
えなぴ 同じですね。もはや親友っていうのもまた違うし、よく幼なじみで友達の間柄ですって言ってるんですけど、それだけじゃないし、なんだろうね。もう、「むくえな」っていうカテゴリーができてほしい。
むく いい、それ(笑)。
えなぴ うちらみたいに親友を超えた関係値の子たちがいたら、「あ、あなたたちは『むくえな』なんだね」って、声かけたいな(笑)。
※1:ライブ配信と動画投稿機能を持つ配信アプリ。もともとは短い動画を投稿する動画共有コミュニティサイトとして中高生に人気となり、数年前よりライブ配信機能が加わった。
※2:振りを合わせて双子のように踊るダンスのこと。
※3:「【知恵の輪】どっちが頭柔らかい???」ダイソーで購入した知恵の輪を難易度別に外せるか検証する動画。初々しさの中にも、軽快なトークは健在。
※4:「あるある」と思わず共感してしまうシチュエーションをまとめた動画。むくえなは「JKあるある」「インスタグラマー系女子あるある」「ストーリーあるある」など、同世代女子の共感を呼ぶあるある動画を多数投稿している。
※5:「【新世代】次の時代に革命を起こすYouTuberに会ってきました」。かすこんねぅ、PKA channel、になにと共に注目のYouTuberとして紹介された。
【衣装】
むく / ワンピース UNITED TOKYO(¥24,200)
えな / ワンピース UNITED TOKYO(¥22,000)
その他、スタイリスト私物
衣装問い合わせ先:ユナイテッド トウキョウ 神宮前(03-5962-6400)
視聴者プレゼント(むくえな直筆サイン入りチェキ 1名様)
マイペースなむくと、明るく話し上手なえなぴからなる、同級生の幼なじみ二人組。チャンネル名は「むくえなちっく。」。
2017年の結成以降、「あるある動画」「食べながら雑談動画」などで同世代女子を中心に支持を集め、2023年1月、チャンネル登録者数100万人を突破(2023年6月15日時点で110万人)。
著書に『おかしな友情 正反対のウチらが一生モノの友達になるまで』(宝島社)。
▪️2023.7.29(土) 「MUKUENA Fes with ME 2023 IN OSAKA」
▪️2023.8.9(水) 「MUKUENA Fes with ME 2023 IN TOKYO」
▪️2023.8.10(木)〜8.11(金) 「Chik POPUP withME 2023」