2021年8月5日発売「my HERO vol.01」より引用
【YouTuberたちの告白】my HERO vol.01 ~ BEHIND THE SCENE ~
──まあたそさんは、なぜYouTubeを始めたんですか?
まあたそ 子どもを保育園に預けて働きたかったんですけど、入園できる時期が決まっとって。次に預けられるタイミングまでの3カ月間、家で子どもを見んといけんから仕事ができなかったんです。「暇じゃな、YouTube撮ろ」と思ったのがきっかけでした。
──どんな動画だったんですか?
まあたそ 最初はメイク動画じゃなかったんです。身内に近況を報告する目的だったし、髪の毛染める、プリクラ撮る、みたいなものでまったく「美容系(※1)」ではなかった。そしたらいきなり「急上昇」に乗って「えっ!?」と。もともとTwitterでメイク前、メイク後の写真がバズっとったのもあって、それでメイクの動画を撮り始めたら20万人、40万人と登録者数が増えて、ファンもつき始めた。これはやめるにやめられんと思って、続けることにしました。
──自宅にいた3カ月の間に流れをつかんでしまったんですね。
まあたそ 結局その後、働く暇もなくYouTuberになりました。それがなかったら近所のローソンで働く予定でした(笑)。今は芸能人も参入してきているから珍しくないけど、当時、一般人でここまで勢いよくファンをつけた人は他にいなかったみたいです。「収益化される前にフォロワーが10万人を達成した唯一のYouTuber」とGoogleの人に教えてもらいました。しかも、YouTube始めた当初にいきなり知らない番号から電話がかかってきて。カタコトの日本語だったので「なんやこいつ?」って思ってたら、それがGoogleの担当者だったんです(笑)。
──その時は「YouTuber」という自覚はまだなかった……?
まあたそ なかったです。それに、まさかこれだけで生計立てるとは思ってなかった。息子もおるし、両立できるかも不安じゃったし。「◯◯人フォロワー達成」という数字の目標も、やりながらだんだん出てきた感じです。YouTuberの友達ができて、事務所にも入って、「100万人目指そう!」ってみんな言っとるから、うちも影響を受けて。今もGoogleの担当者には数カ月に1回、打ち合わせをしてもらっています。チャンネルの数字を分析してくれていて、打ち合わせでアドバイスをもらうこともあります。
──まあたそさんは「“自称”美容系」と名乗られているのが特徴ですよね。メイクのビフォー・アフターだけでなく、しゃべりの面白さや、「◯◯してみた」のネタ動画も魅力的です。子どもの頃から人前に立つことが好きなタイプだったんですか?
まあたそ そうですね。昔から目立つのがめっちゃ好きで、地域で子どもたちが集まってお祭りとかでダンスをする、というのに参加するときも「真ん中じゃないといや!」という感じ。本当に負けず嫌い。あと、小さい頃にビデオカメラを与えられて、それに向かってしゃべったり踊ったり、小学校に入る前からYouTubeっぽいことをしとっているのが残っていました。
──やっぱり素養があったんですね! 当時は憧れの人はいましたか?
まあたそ うちのママの影響で浜崎あゆみが好きでした。浜崎あゆみがロングからショートにしたときにうちもロングヘアからショートに(笑)。ギャル文化が大好きで、小学校を卒業するときにタイムカプセルに『egg(※2)』や『Ranzuki(※3)』の雑誌から好きなギャル切り抜いてノートに貼ったものを入れたくらいです。当時、『Popteen(※4)』でくみっきー(※5)みたいな色白のギャルがはやっているなか、うちはガングロのマンバギャルが好きだった(笑)。
──学校ではどうしてたんですか?
まあたそ ありがたいことに、うちの行っとった中学と高校が自由な学校で、私服OK、化粧もOK。だから、そこで個性を出しまくって、日サロに行っとって真っ黒。同じ学校にはあんまり似たようなタイプはおらんかった。独自路線でした。
──まあたそさんの中高時代は「48ブーム」があって、アイドルが身近に感じられた世代ですよね。
まあたそ そう。中1のときに、部活に入るか、AKBのオーディション受けたらとママに勧められて。でも、そのときから自分の見た目にコンプレックスを抱き始めとったから、「アイドルなんて……」と思って吹奏楽部に入りました。でも、なんとなく憧れを捨てきれなくて、「踊ってみた」の動画をニコニコ動画に投稿したんです。そしたらコメントとかもついて、承認欲求を満たしとった気がする。
──岡山は出たい、とは思っていた?
まあたそ めっちゃ思ってました。高校の頃から本当に岡山が嫌いで。昔はTwitterの名前「まあたそ@岡山死ね」でしたもん。岡山は遊ぶ場所がないのに、テレビつけたら東京では同年代の子が学校帰りに「109」とか「竹下通り」で遊んどる。「なにこの違い!?」「人は平等じゃない!」と思って。岡山を出たい、と思いながらも、東京に知り合いがおるわけでもないし、やっぱり怖いと思う気持ちが強かった。中学生のときはほとんど引きこもりでアニメばっか観とったから、コミュニケーション能力にも自信がなかったし。お金を貯めて東京に遊びに行くことはできるから、そのスタンスでいいか、って。完全に妥協です。
──今も生活の拠点は岡山ですよね。東京で暮らそうとは思わないですか?
まあたそ 思わないです。でもそれは、子どもがいるからですね。自分一人でYouTuberになってたら岡山を捨ててたかもしれない。あとは「岡山が生んだ奇跡の不細工」っていうキャッチフレーズさえなければ(笑)。
──前に出ていきたい気持ちと「自分はかわいくない」というコンプレックスの間で、中高生時代にはかなり葛藤もあったのでは?
まあたそ 葛藤していました。うちは「かわいい」「かわいい」と言われて育てられたし、もともと小さいときって、「かわいい」「ブス」っていう概念がないじゃないですか。でも、ギャルの雑誌でメイク特集があったときに真似して自分でやってみたら、完成したモデルと、うちの完成したものが全然違うということに気づいた。「あれ! もしかしてブスなのでは!?」と、衝撃でした。
──誰かから、容姿をからかわれた経験もあるんですか?
まあたそ ありますよ。中学生のとき、地元の駅前を歩いとったら、誰かからトントンと肩叩かれて、振り返ったら、「後ろ姿詐欺じゃねェか!」って言われて。ヤンキー校の男の子でした。「テメェもゴリラ顔じゃねェか!」とけんかになったりして(笑)。その当時からブログをやっていてネタ集めをしていたから、「いいネタもらった!」という感じもあり。でも……ショックだったと思いますよ。
——人から言われるってやっぱり落ち込みますよね。
まあたそ まあ、落ち込むかどうかはタイミングによります。誰からなんと言われてもどうでもいいや、かわいいって言ってくれるファンの子もおるし、見た目で悩むのも疲れるし、と思える「悟り期」があるし、そのあとまた「病み期」が来たりするんです。「なにこの顔!?」みたいな。いまだにそれの繰り返しです。観る人みんなにはやっぱりポジティブな気持ちになってほしいから、動画はそのポジティブなときに撮るんですけどね。
──自分の見た目を、いつでも100%受け入れられる瞬間は来ると思いますか?
まあたそ どうなんじゃろ。整形せん限り、ないかも。自分が理想とする「なりたい顔」はあるから、周りがどんだけ肯定してくれても、自分が納得せん限り、永遠に受け入れられないと思います。顎が5ミリ短ければ、とか、鼻があと2ミリ高かったら、とか、そんなことばっかりです。
──そのコンプレックスを乗り越えたいとは思わない?
まあたそ ここ2、3年悩んどって。「ポジティブでいなきゃ!」みたいなプレッシャーがあったんですよ。自分の顔を好きになって、自己肯定感あげて、みんなにもポジティブでいてほしい、というふうに思っとったけど、なんかそれも違うな、と。病むのも大事じゃな、病んでもいいな、と思い始めた。ポジティブになるのと、落ち込むのと、その繰り返しでいいな、と。人生トントンで、結果、なんだかんだでうまくいく、ということが分かってきたのかもしれないです。
──「外見で悩んでいる人にアドバイスはありますか?」
まあたそ この質問いろんなところでされるんじゃけど、毎回違うこと言っとったらごめんなさい(笑)。今思うのは、絶対、否定せん人はおるし、どんなに自分のことを「不細工」と思っとっても本気で「かわいい」と言ってくれる人はおるから、大丈夫だよ、って言いたい。認めてくれる場所を見つけるのがすごく大事。外見で悩む子は、その場所を見つけられてないんだと思う。うちには今、「かわいい!」って言ってくれるファンの人や家族がおる。お世辞じゃなく、本気で言ってくれる人はマジでおるし、自分の自己肯定感をあげてくれる場所もある。そういう人や場所を見つけて、大事にしてほしいです。
──まあたそさん自身は、それをもう見つけた?
まあたそ 見つけつつ、まだ、揺れ動いてるところはあると思います(笑)。うちは、かわいいと思われたいから化粧をするし、自分でもかわいいと思える写真を載せるんですけど、人からいざ「かわいい」と言われると、どうしていいのか分かんなくなる。これは本当に、自分でも気持ちの落とし所がよく分からないから、30歳までには答えを出そうと思ってるんです。「不細工」で売っとる自分もおるわけだから、「かわいいでしょ」と認めるのはダメだと思ってるのかも。そもそもうちは、動画を撮っているときの自分は「まあたそ」で、撮ってないときは「まどか(本名)」だと思っているから、それと同じかも。以前、動画を編集しとるときに、友達に「何してんの」と言われてうちが「まあたその編集してる」とポロッと答えたらしくて。完全に自分自身を「分けて」いるみたいですね。
──「まあたそ」は自分とは別のキャラクターという感じ?
まあたそ 「まあたそ」と「まどか」がいるから、不細工な自分も楽しめる。仕事をするときの判断基準は、「まあたそ」と「まどか」が二人そろって「OK」と言ったらOK、という感じ。マネージャーもそれを分かってくれるので、「これは『まあたそ』的に、『まどか』的にOKですか」という聞き方をしてくれます(笑)。テレビとかの仕事をするか、しないかという判断もそうです。「まどか」は分かってるんですよ、TVに出て知名度あげていかないと、って。でも「まあたそ」が「がんばれない……」って言うから、「じゃあやめとこ!」って(笑)。
──そうやってバランスを取っているのかもしれないですね。
まあたそ 岡山と東京をずっと行き来していることも、影響しているのかも。東京に来たらとにかく仕事して、友達と会って遊んで。岡山にいるときには「お母さん」だから、朝7時には起きて、夜9時には布団に入る、みたいな生活。全然違う性格、違う人格になってますね。
──そもそもまあたそさんは、「暇じゃな」というきっかけでYouTubeを撮り始めたとのことですが、現在の動画投稿に対するモチベーションは?
まあたそ メインチャンネル200万人突破することです。あと4万人(2021年7月10日時点)なんですけど、それが難しい……。それでかなりプレッシャーを感じてしまって、メインチャンネルにあげられず、サブチャンネルに出してしまったりとか。年々サブが追いついてきて、そろそろ120万人になるんです。メインを追い抜かれそうで「危ない!」と思ったり。
──メインとサブの違いは、ご自身ではどうつけているんですか。
まあたそ サブチャンネルはもともと、登録者数が10万人超えたから、「なんかしないと」と思って作ったんです。でも自分でハードルあげてしまうから、最初は気軽に投稿してたサブチャンネルの動画も、「次は前のより絶対おもろくしないと」と、気づいたらメインチャンネルと同じ手の入れようになってきちゃって、もう何が違うのか分からん、わけ分かんないことになってます(笑)。
違いは、厳密にはないんですけど、冒頭にあいさつがあるかないか。あとは「こだわり」です。ただ自分がその動画を、気に入っているか気に入っていないか。メインの動画にするつもりで撮っても、編集の段階で「違うわ」と思ったらあいさつ部分をカットしてサブに入れることもあります。編集のときのモチベーションは日々違って、プライベートで嫌なことがあったときなんて、ほんまにつまらんテロップしか入れられないんですよ。だけど気分が乗っとるときとか、いろんな人と会って語彙力が多いときの編集は本当に面白くなる。だから、編集中に決まることもあります。
──「面白くしないと」というプレッシャーとの闘いなんですね。
まあたそ YouTube始めた当初は、ほんまに何も考えずにしょうもないやつを投稿してたけど、今はめっちゃプレッシャーを感じてます。ウケる動画の傾向も、見えづらいんですよね……自然体で、なんなら毒とか吐いてる、こんなの出して大丈夫か? というものがバーンと跳ねたり。一方で、いろんな人に出てもらって、たくさんお金をかけて、これは面白い、行くぞー! とアップしたものが「十何万再生」とか。次の日の朝起きて、数字を確認したらあまりにもショックで、「もうやんない!」って思うときもあるけど(笑)。他のYouTuberたちが面白い企画やって、目を引くサムネを作ったりしてがんばっているのを見ると、うちもやらな、って思ってしまう。
──YouTubeは今後も続ける予定ですか?
まあたそ 続けられるなら、ずっと続けていきたい。でも、それこそ前例がないから。女性YouTuberで、こんなキャラで、30歳になったときどうなってる? なんて、先のことは分からない。YouTube始めた当初はふざけても怖くなかったんです。でも、今までやってきたことをこれからも続けたら「イタい」になるんじゃないかって。自分は年齢を重ねて、若い子がどんどん出てきとる中で、マジで分からないです。だってYouTuberという職業自体、Googleが潰れたらたぶんなくなるじゃないですか。うちはGoogleをどうにかできるわけでもないし。日々、どうにかなると思ってやってますけど。
──でも、まあたそさんは誰かにとっての「前例」になれていますよね。まあたそさんに憧れてYouTuberを目指す人には、どんなアドバイスをしますか?
まあたそ 本当に行動する人は、口で言う前に行動するよ、と言いたいです。うちが嫌いなのは、行動する前に言っちゃう人種。ほんまにやる人って、言う前にやるんですよ。YouTube始めたいという人、今まで何人も見てきたけど、大概「カメラどこの買った?」「どんくらいで伸びた?」「どんくらいお金もらえんの?」とうちに聞いてくる。そんなん調べれば分かるし、やらんと分からんことやし、うちは誰にも聞いてない。ほんで、ちゃんと目標を達成する人って、誰も知らん所で、気づいたら目標達成してる。口ばっかりでかいやつは、うまくいかないです。
──では、まあたそさんの今の夢は?
まあたそ ずっとアパレルやりたいと思っとったから、自分のブランド「BEFTEY(ビフティー)」をスタートできたのは本当にうれしいです。コロナの影響もありつつやっとスタートできて、今後もっとブランドを大きくしていきたいという意欲もあります。海外にも行きたい。海外進出ってなかなかないじゃないですか。今いろんなYouTuberがアパレルやっとる中で、みんながやってないことがしたい、と思います。
インタビュー全編は本誌をご覧ください。
※1:コスメやメイク方法の紹介、エステ・脱毛体験談など、美容に関する企画
※2:1995年創刊のハイティーン向けのギャル系ファッション誌。2014年7月に惜しまれつつも休刊となったが、2018年web版が復活、2019年には復刊号を発売し話題になった
※3:1998年創刊のティーン向けファッション誌。2016年に休刊となったが、2021年4月にYouTubeチャンネルとして復活
※4:1980年創刊のティーン向けファッション誌。平成中〜後期は現在よりギャル要素が強かった
※5:舟山久美子。『Popteen』で2009〜10年にかけて17ヶ月連続表紙という記録を作ったカリスマモデル
1995年福岡生まれ、岡山育ち。キャッチフレーズは「岡山が生んだ奇跡の不細工」。2013年にチャンネルを開設し、2017年から本格的に動画投稿を始める。2017年7月にサブチャンネルを開設し、翌年9月に登録者数が100万人を突破。現在はメインチャンネル209万人の登録者数を誇る(2023年5月20日時点)。19歳で出産し、一児のシングルマザーである。2021年5月には自身がプロデュースするアパレルブランド「BEFTEY(ビフティー)」を発表。