ライター:さかもと はるか
小説家 湊かなえの経歴
引用元:湊かなえ Kanae Minato 双葉社オフィシャルサイト
湊かなえ先生は、1973年1月生まれの小説家です。生まれは広島県ですが、現在は兵庫県の淡路島に在住しています。
子どもの頃から空想が好きで、江戸川乱歩や赤川次郎の作品をよく読んでいたようです。1996年から1998年まで青年海外協力隊に所属し、トンガで家庭科教師として栄養指導をしていたという経歴を持っています。
本格的に文章を書くことに携わるようになったのは、28歳で第一子を出産後のことでした。「何か新しいことがしたい」と、雑誌の『公募ガイド』を購入し、川柳や脚本の投稿を始めます。
2005年には「BS-i新人脚本賞」に佳作入選しましたが、地方在住の新人脚本家がプロを目指すのは難しいと、プロデューサーから指摘され、次は脚本と小説のコンクールで一番になることを目標としました。
『聖職者』から続く連作である『告白』は、2009年、第6回本屋大賞を受賞し、2010年には松たか子主演で映画化もされました。『告白』の書籍売上は、累計300万部を超え、大ベストセラーとなりました。
現在では、兵庫県で主婦業と並行しながら、執筆業も行っています。ベストセラー作家としてミステリー小説を出版するだけでなく、テレビドラマの脚本を書くなどマルチに活躍されています。
湊かなえ作品の魅力
湊かなえ作品と言えば、一番に思い浮かぶのが【イヤミス】な物語です。イヤミスとは「いやな気持ちになるミステリー」の略称。
読後は、後味が悪く、裏切られたような嫌な気持ちになりますが、多くの読者を惹き込む魅力があります。
湊かなえ作品には、多くの【イヤミス】作品が存在します。湊かなえ先生が書くイヤミス作品は、読者を嫌な気持ちにさせるラストが待ち受けていますが、余韻を大切にしている作品が多くあります。
ラストに登場人物がどうなったのかを全て書くのではなく、一部だけ描写し、後は読者に想像させるという展開がよく見られます。
読者の想像力を駆り立てる作品も、湊かなえ先生の魅力と言えるでしょう。
湊かなえ作品は、登場人物の視点で物語が進んでいくモノが多くあります。登場人物の視点で描くことで、その人物にしか知り得ない出来事をリアルに描写していきます。
また、登場人物が複数いる作品では、描かれる視点も複数になります。例えば、作品の中で1つの殺人事件が起きたとすれば、1章ではAという登場人物の視点から描き、2章ではBという登場人物の視点から殺人事件を振り返るという手法が多く使われています。登場人物本人の感情がリアルの描写されているのが、湊かなえ作品の魅力だと感じています。
他人への憎悪、嫉妬心、ときには恋心など、登場人物でなければ語られない感情をうまく描写し、事件の真相へと繋げていくところは、読者を惹き付ける最大のポイントと言えるでしょう。
おすすめ作品
湊かなえ作品は、魅力的なモノも多く、ミステリーのなかでも、「学園モノ」、「家族」、「恋人」、「友人」などさまざまなジャンルの作品が販売されています。
ここでは、湊かなえのおすすめ作品を4つ紹介します。
引用元:双葉文庫
2022年10月の時点で、文庫版の累計発行部数は300万部を超え、2010年に松たか子主演で映画化されました。
我が子の愛美を亡くした教師・森口悠子は、3学期の終業式のHRで、教師を辞めることを告げます。生徒から教師を辞める理由を求められるなか、「娘は事故死と判断されたが、本当はこのクラスの生徒、少年Aと少年Bに殺された」と告白するところから物語が始まります。
森口の娘・愛美の死というひとつの事件を題材に、モノローグ形式で「犯人」、「犯人の家族」、「クラスメイト」などの視点から真相に迫っていきます。
散りばめられた伏線の回収や、衝撃のラストなど最後まで目が離せない作品。湊かなえ作品をまだ読んだことがない方におすすめです。
引用元:双葉文庫
超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住んでいる野口夫婦の死体が発見されるところから物語が始まります。死体発見現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。それぞれの登場人物の視点で、事件の真実を証言していきます。
タイトルの通りに、主要人物はすべてNのイニシャルが付いており、それぞれがNの付く誰かのために行動をしています。現在と過去を交錯させながら愛とはなにかと考えさせられる切なさに満ちた物語。ミステリーだけでなく、恋愛モノの小説が好きな方にもおすすめです。
引用元:双葉文庫
高級住宅街に住むエリート一家で起きたのは、父親が被害者で、母親が加害者というセンセーショナルな殺人事件。エリート一家と向かいに住む家族の視点から、事件に真相や、殺人の動機などが明らかになっていきます。
登場人物の心理描写がとくにリアルなのが、この作品の魅力です。家族をテーマにしたミステリー小説が読みたい方におすすめです。
引用元:講談社文庫
主人公である深瀬和久は、唯一の趣味が美味しいコーヒーを入れることという平凡なサラリーマンです。
ある日、深瀬は自宅近所にある行きつけのクローバーコーヒーに行くと、越智美穂子という女性と出会います。何度か店で会ううちに美穂子と付き合うようになり、深瀬の日常が華やぎだしたと思った矢先、「深瀬和久は人殺しだ」という告発文が美穂子に届き…。
深瀬は、大学生の頃にある事故で親友を亡くしています。その事故に関わった大学ゼミの友達と深瀬、美穂子の視点で物語が進んでいきます。ラストは、読者の誰もが予想できなかった衝撃的な展開が待ち受けています。「これぞ湊かなえ作品!」という感想を抱くおすすめの1冊です。
今回は、小説家『湊かなえ』の経歴や作品の魅力について紹介しました。
湊かなえ作品は、イヤミスな物語ながら読者を惹き付ける魅力があります。ファンタジー要素があまりなく、誰にでも起こりうる出来事を題材としており、物語に入り込みやすいのが特徴です。登場人物のリアルな心理描写も見どころの1つです。
湊かなえ作品のおすすめを4つ紹介しましたが、まだまだ魅力的な作品が数多くあります。ぜひ、湊かなえ作品のなかで、お気に入りの1冊を見つけてみてください!